小西新右衛門
?一夜越しのなすをもう一度煮立て、木じゃくし二本でなすの上下をはさんでぐっと煮汁をしぼり、おわんの真ん中へ二つ並べ据え、薄くず汁のあつあつをたっぷりよそい入れます。そしてなすの上に錦糸卵をふうわりと着せかけ、おろししょうがを多い目に添えてふたをします。なすは煮立つと鉄分が出て色変わりしますが、不思議に一夜越しにすると、おいしそうな紫色に戻っていて、錦糸卵との配色もよく、なすの味と薄くず汁の加減が、ぴったり調和すれば「なすのくず汁なんて」と、まずいものと決めてかかった人ほど、「天下の珍味なり」と、舌つづみをうたれましょう。
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この料理法は、伊丹の旧家で銘酒「白雪」の醸造元の小西様で教えていただきました。先代新右衛門様は、関西きっての大茶人でした。夫人は大多喜の城主だった大河内家の息女で、理研の大河内正敏様の妹君であり、隅田川畔の今戸の下屋敷で成長なさったと聞きおよびます。いずれ、江戸紫の若なすで作られた大河内家のお料理なのでしょうが、江戸時代の香味が残っているように思いました。おいしいという料理は、家代々に伝わる遺産でもあり、作る人の心次第だと感じました。